計量・計測システム構築にかかせないロードセルの原理と使用方法について説明します。
ロードセルは、力の大きさを電気信号に変える変換器です。
劣悪環境で使用するロードセル、高精度ロードセル、ワンポイントロードセルなど、用途に応じ、数多くの種類が生産されています。
力の測定には、光、磁歪、弦振動、静電容量、インダクタンスなどをセンサとして使用したものもありますが、 ここでは応力に比例してひずむ起歪体とひずみゲージを使用しているロードセルについて説明します。

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ユニパルスのロードセル製品一覧

ロードセルの性能を引き出す多彩な計測器をラインアップ

ロードセルを使用するためには、ロードセルからの電気信号を増幅し数値化するための計測器が必要です。 ロードセルの電気信号(電圧)は、最大でも20mV程度しかありません。この小さな電圧をさらに数万分の一にまで分割して計測するため、 使用する計測器は安定性が高く、高精度でなければなりません。
しかも、ロードセルが使用される環境は劣悪な場合が多いため、ノイズなどの不要な信号の影響を受けにくくし、必要な信号のみを取り出す技術が必要です。
弊社ではロードセル用の高精度アンプ、重量計測用のロードセル指示計、圧力・トルク計測用のデジタル指示計など、ロードセルの性能を100%引き出す多彩な製品群を取り揃えています。

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ユニパルスの製品一覧


ロードセルの基礎知識についてはこちらの資料でも分かりやすくご説明しております。

ロードセルの原理と使用方法 目次

1.ロードセルの原理
ロードセルは、力に比例して変形する起歪体とその変形量”ひずみ”を測定するひずみゲージからできています。
図のように、板の一方を固定し、片持梁を作ります。自由端に力を加え、ひずみゲージを、ひずみが発生する場所に 貼り付けて、その力に比例する変形量”ひずみ”を測定します。

ひずみに比例して電気抵抗が変化する4箇所のひずみゲージでホイートストンブリッジを作ります。このホイートストンブリッジからは、印加電圧に比例し、かつ、 ひずみに比例した非常に小さい電圧信号が出力されます。この小さな信号を増幅し、数値として表示器で表示します。
このとき、増幅器はロードセルの性能を引き出すのに重要な役目をします。増幅器には、1μVに満たない信号を 正確に識別できる性能が求められます。 ロードセルの出力感度の表示は、mV/Vで示されます。これは、印加電圧当たりの定格荷重時の出力電圧です。
仮に、定格容量200Nのロードセルに1.5mV/Vが示されていたとすれば、200Nを負荷し、印加電圧を1Vにしたとき、 1.5mVが出力されます。もし、印加電圧が10Vであれば、15mVが出力されます。

2.ひずみの検出方法
起歪体には、ベンディング型、コラム型、シェア型などがあります。起歪体の構造は、測定軸以外からの力の影響を受けないように工夫されています。

上図中、匣体の中には、コラム型起歪体があり、その起歪体にひずみゲージ1,2,3,4 が貼られています。1,3 は荷重方向、2,4 は荷重方向に対して直角な円周方向のひずみをそれぞれ感知します。ゲージ3,4 はコラムの裏側に貼られています。
ロードボタンに力がかかり、コラムが圧縮されるとゲージ1,3 の電気抵抗が小さくなり、ゲージ2,4 のゲージは圧縮でコラムが太くなることで伸ばされ、電気抵抗が大きくなります。

ゲージ1,2,3,4で上図の様なホイートストンブリッジを作り、印加電圧をかけると、その電圧に比例し、かつ、抵抗変化に比例した出力電圧が得られます。

3.ロードセルの内部構造(ひずみの検出方法の種類)

4.ひずみゲージとは
フィラメント状の導電体が絶縁シートに貼り付けられていて、絶縁シートが伸ばされると一緒に導電体も伸びるようになっています。 そのひずみゲージを起歪体に貼り付けておくと、起歪体が伸びると導電体も一緒に伸び、抵抗値が変化することになります。 縞の方向が感度方向で、その部分はフィラメントと呼ばれ、多くの導電体はニクロムなどが主成分です。絶縁シートは、ベースと呼ばれ、 ポリイミドと呼ばれるシリコーン系の薄い樹脂フィルムなどでできています。ベークライトやエポキシでできているベースもあります。

5.ひずみゲージの働くわけ
ひずみゲージには、120Ω、350Ω、1000Ωなどの電気抵抗があり、ゲージ抵抗と呼ばれています。このフィラメント状の導電体を引き伸ばすと 長さが伸び、かつ、太さが細くなります。伸ばされた割合で電気抵抗が増え、かつ、細くなった割合で電気抵抗が増えますので、両方の和で 電気抵抗が増えることになります。従って、引き伸ばされた割合のおよそ2倍の割合で電気抵抗が変化します。この比率のことを、ゲージ率 とかゲージファクタと呼んでいて、多くのひずみゲージでは、ゲージ率2ないし2.1程度です。

この電気抵抗変化をホイートストンブリッジによって電圧信号に変換します。 ここで、出力電圧は、印加電圧が高いほど大きな出力電圧が期待できますが、印加電圧が高すぎるとゲージが焼損したり、起歪体に温度膨張などの 悪影響を与えたりしてしまいます。
一般には、ゲージ抵抗350Ωでゲージ1枚あたり5V程度が推奨されています。 また、印加電圧が変化すると感度が変わってしまいますので、 印加電圧の安定性は、測定に大きな影響を与えます。

6.ロードセルの使用方法
ロードセルは、ひずみ増幅器や、ロードセル指示計などの印加電圧電源を持つ計測器に接続して使用します。
性能を十分引き出すには、ロードセルの設置は、振動の少ない機械的に高剛性の台が必要で、風雨の直撃のないことや、急激な温度変化や太陽光に暴露されない工夫も必要です。
ひずみ増幅器や、ロードセル指示計は、安定したゼロ点、感度、安定した電圧電流の印加電源が必要です。ノイズが少なく、高分解能であることも重要です。
高精度が要求される場合には、ケーブルの抵抗による印加電圧低下を常に監視するいわゆるリモートセンス方式の6線式が必要になります。
非常に小さい信号を増幅するため、電気的ノイズの影響を受けない工夫も必要です。

ロードセルは、力を測定する変換器ですので、測定値はN(ニュートン)の単位で読むことになります。重力加速度が既知の場合には、質量(㎏)を測定することも可能です。
例えば、力較正されたシステムにおいて、重力加速度が9.8m/s2であるとき、ある質量を測定し、9.8Nを表示した場合には、ある質量は1㎏です。逆に、 較正された質量1kgの分銅があり、重力加速度が9.8m/s2であるとき、指示計のメモリを9.8に合わせることにより、メモリ1=1Nを簡易的に較正できます。重力加速度が安定で変化がなければ、 質量1㎏をメモリ1に合わせることにより、メモリ1=1kgを簡易的に較正できます。
しかし、重力加速度は場所や高度により異なりますので、質量較正は現地で行なう必要があります。
例えば、稚内と鹿児島では1kgの質量をロードセルの秤で測ると約1.2gの差が出てしまいます。
(国土地理院重力加速度 稚内980642.6mGal 鹿児島979471.18mGal)

7.ひずみゲージが働く理論
絶縁シート上の導電体が、引き伸ばされ変形したとき、電気的変化は以下のようになります。 変形しないときの電気抵抗は

R:抵抗,ρ:導電体固有の比抵抗値,L:導電体長さ,A:導電体の断面積,d:直径 導電体がδLだけ変形したとすると電気抵抗R1は

ここで、υ:ポアソン比,ε:ひずみ(1)と(2)の差を(1)で除すことにより、抵抗の変化率を得られます。

一般のひずみゲージでは、Kは2ないし2.1程度を示し、このKをゲージファクタとかゲージ率と呼んでいます。

参考:金属のポアソン比υは0.33程度ですので、K=2.1とすれば、kは、0.44であり、比抵抗値がひずみに対し、大きな比率で変化しており、 無視できないことがわかります。

8.ひずみ(ε)と出力(mV/V)の関係

上図の様(初期抵抗値Rg=R)なホイートストンブリッジを考えると起歪部にひずみεが発生するとゲージ抵抗Rgは

ここで、K:ゲージファクタ、
出力電圧(Vo)は

ここで、K=2,ε=0.001とすると

Vbが1V、ひずみεが0.001のとき、出力電圧(Vo)は、ほぼ0.0005Vであることを示しています。
つまり、K=2のゲージでは、1000マイクロひずみ(ε・10-6)が発生すると、0.5mV/Vの出力を得られることになります。
起歪部に4枚のゲージが使用されていれば、4倍のひずみが検出され、4倍の出力が得られます。つまり、起歪体の機械的ひずみが、1000ε・10-6であれば、電気的には4000ε・10-6のひずみ量、あるいは、2mV/Vの出力が得られます。
ただし、ロードセル内部の機械的ひずみは、出力に比較し、2割程度大きなひずみを発生させ、温度補償や感度調整で出力を定格値に合わせています。
また、K=2.1であれば、1000ε・10-6で0.524mV/Vの出力が得られます。

9.ポアソン比
ポアソン比(Poisson’s Ratio)は、弾性範囲で、引っ張りを加えたときの伸び(ひずみ)、と荷重に対し直角方向の縮み(ひずみ)の比を言います。
ポアソン比=-横ひずみ/縦ひずみ とされています。
金属の場合0.33程度が多く用いられています。