DCプリアンプは、ストレンゲージを応用した各種センサからの微小な信号を増幅するためのものです。

ユニパルスのDCプリアンプは、熱的設計を徹底的に行い、長期間エージング並びに部品の選別技術の開発、電圧特性の改良により、モノリシックあるいはチップ部品による薄膜集積回路などでは到底実現困難な精度と安定性を保証しています。

DCプリアンプの原理 目次

1.なぜプリアンプが必要なのか
各種物理量(荷重、圧力、トルク、加速度など)に対応して処理しやすい出力信号に変換する器具のことをセンサと呼びます。
このセンサから出力される信号は一般的に低レベル信号であり、表示器、記録計、調節計などの機器で扱いやすくするためには安定した増幅器が必要となります。
ストレンゲージを使用したセンサからは数 mV 〜 数十 mVと非常に小さな電圧信号が出力されます。
DCプリアンプは、この小さな電圧信号を数 V 〜 10 V程度の電圧へ正確にかつ安定的に増幅し、各種計測機器で入力信号として処理することを可能にします。
また、数 mVの電圧を 1/10000(0.01%)程度の精度で処理するためには0.1 μV程度の電圧を識別できる性能が求められます。

2.高精度DCプリアンプ U300
ストレンゲージ式センサには、荷重(重量)、圧縮・引張などの力、油圧・空気圧・ガス圧などの圧力、回転体のねじれ力ねじ込み・締付けトルク、振動や衝撃の加速度などの物理量を電気信号に変換するものがあります。また、荷重を変換するセンサのことは、特にロードセルと呼んでいます。
ストレンゲージ式センサから出力される小さな電圧を正確にかつ安定的に増幅することを目的にDCプリアンプ U300は製品化され、モノリシックICでは得ることができない高性能を実現しています。
またU300は、ロードセルを使用した工業はかりなどに特に適するように、ゲインを200倍の固定とし、ゲインドリフトを低く抑えています。

3.DCプリアンプは平衡差動入力
ストレンゲージ式センサの内部回路は、ホイートストンブリッジ回路のため平衡型信号源になっています。
U300の入力回路には、平衡型信号源を接続し同相モード電圧を打ち消すことができるように平衡差動型を採用しています。
商用電源の50 Hzまたは60 Hzに由来する誘導ノイズ(ハムノイズ)は、平衡差動の信号ラインには2線に対して等しい電圧レベルで重畳します。(図A)
平衡差動型の入力回路では差動電圧のみを増幅することになるため、2線に等しいレベルで重畳された同相モード電圧はここで打ち消されることになります。

4.ゼロドリフト(オフセット電圧ドリフト)
U300はオフセット電圧ドリフトが非常に小さいことがその特長の1つです。
U300は 0.25 μV/℃、U300Aでは0.1 μV/℃を全数保証しています。
ドリフト試験温度は-10 ~ +40℃ですが、図Bでも示されているように-20 ~ +80℃の温度範囲でも特性が変化するようなことはありません。

U300のウォームアップドリフトは周囲温度や実装状態によって多少の差がありますが、電源投入直後より20分間で1 ~ 2 μV程度と非常に小さく、通常の使用目的には面倒なプレヒートなどは必要なく電源投入と同時に使用できます。(図C)

また内蔵素子の熱膨張や機械的ストレスなどに起因する経年変化が少なくなるように内部構造に工夫がされています。
温度一定条件下での経時ドリフトは最初の1ヶ月間で2 μV 以内、その後の1年間で1 μV 以内と非常に小さくなっています。また更に5年、10年の経過に対するドリフトは極めて僅かな電圧であり、定期的な再調整を不要にします。(図D)

5.ゲインドリフト
工業はかりなどの応用分野ではゲインドリフト特性は極めて重要な要素となります。
ゲインドリフト特性は使用している抵抗素子の安定性にのみ依存しますのでU300では内蔵抵抗素子の温度係数のトラッキング特性を管理し5 ppm/℃を保証しています。
ゲインドリフト値は信号源抵抗がほぼ0 Ωにて規定されています。
しかし実際にはストレンゲージ式センサなどのように必ず個別に信号源抵抗をもっており、バイアス電流の温度ドリフトが大きいと、これによってゲインドリフトなどの誤差が出てしまいます。
U300には温度センサが組込まれており、周囲温度の変化に対してバイアス電流が変動しないような補償回路を内蔵しています。したがってバイアス電流の温度依存性は極めて低く抑えられており、ゲインドリフトなどへの影響はほとんど無視できます。(図E)

6.入力電圧ノイズ
U300の入力部で発生する電圧ノイズ、f = 0.1 ~ 10 Hzは0.2 μVp-pと非常に小さく、高精度、高分解能を得るアプリケーションに最適です。(図F)
工業はかりでは、ロードセルには大きな初期荷重(風袋)がかかります。また衝撃荷重や過負荷に耐えられるように実際に計量・計測する範囲よりも高容量のロードセルを使用するのが一般的です。
この場合、計量・計測する範囲はロードセルのフルスケールを大きく下回りますので、出力される電圧も比例して小さくなります。
高分解能を求める場合、最小目盛に相当する電圧値が電圧ノイズの値を上回っていないと、ノイズに影響され安定したデータを得ることができません。

定格荷重6 kg、定格出力2 mV/Vのロードセルを1個使用し、500.0 gの計量をする場合に最小目盛を0.1 gとするとこれに相当する電圧は、0.33 μV(印加電圧10 V時)になります。
このような条件でも、U300をプリアンプとして搭載した弊社インジケータでは、安定した目量を指示し、高精度な計量を実現できます。